実際に手を頭の後ろで組んだ小夜子は、予想以上の屈辱感を味わわされることになった。
下着姿で取るこのポーズは、無抵抗であることを示しているばかりではなかった。脇を晒し、胸を突き出しているかのような姿勢は、いかにも卑猥だった。どうぞ好きにしてください、と自分から身体を献上しているような錯覚がした。男の性奴隷になった気分だ。
立っている場所がキッチンであることも、小夜子の恥辱を煽った。料理をするためだけに用意された空間で下着姿にされたことにより、現状の異常性がより際立つことになったのである。
「お、お金なら、そこの棚に……」
小夜子の視線を追って、男は扉の付近を振り返ったが、それは反射的なことに過ぎなかったようで、すぐに前へと向き直った。
「金は当然もらっていく。今はあんたの身体に用があるんだ、奥さん」
男は低い声で言い、小夜子のブラジャーを上にずらした。
豊かとは言えないが決して乏しいわけでもない乳房も、ブラジャーと一緒に上に引っ張られたが、やがてズレが生じ、ブラジャーから離れ、ぷるんと上下に揺れながら飛び出てきた。
「あ、あ……」
小夜子は何度も後頭部から手を離しそうになった。手で胸を隠して男の視線から逃れたかった。
しかし目の前で煌めくナイフが小夜子をぎりぎりのところで押し留めた。
男は小夜子の乳首を指で摘んだ。
「い、嫌っ」
思わず小夜子は身体をよじったが、乳首を摘んでいる男の指が離れることはなかった。
男は、指の腹で乳首を擦り立てていった。
「…………っ」
小夜子は唇を噛んで必死に声を押し殺した。頭の後ろで組んでいる手をぎゅっと握る。
感じているわけではない。だが、刺激を与えられると、乳首は小夜子の意思に反して硬くなっていった。一度それが始まると、あとは早かった。あっという間に乳首が勃起しきってしまう。
「これからレイプされるってのに、感じているのか? 奥さん」
「そ、そんなこと、ありません」
男の低い声に小夜子は大きく首を振った。
乳首が勃起したのは、官能とは何の関係もなく、ただの生理現象に過ぎない。小夜子はそれを主張したかったが、男の機嫌を損ねることを恐れ、結局は言えなかった。
「ここはどうだ? 濡れているんじゃないか?」
男はそう言いながら、ショーツの上から小夜子の股間をまさぐった。
「あ、嫌っ」
小夜子は頭の後ろで腕を組んだまま、腰を後ろに引いた。へっぴり腰になっているかのような情けない格好だった。
「動くんじゃない」
男はナイフの腹で小夜子の頬をぺちぺちと軽く叩いた。
それだけで小夜子は顔面を蒼白にし、卑劣なレイプ魔に向かって「すみません」と言った。
謝罪の言葉を口にしてから小夜子は後悔した。悪いことをしたわけではないのだから、謝ることはない。それなのに……。
優越感を刺激されたのか、男はにやりと笑った。
- 関連記事
-