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ノックをするとドアの向こうから「入れ」という声が聞こえてきた。あたしは扉を開けて、教授室に足を踏み入れた。
まだ医局の下っ端に過ぎない20代の私が教授に直接 呼び出されることなんて、ほとんどないことだ。
「お呼びでしょうか、遠藤教授」
教授室の中央辺りに立ってあたしは言った。
なるべく医者らしく背筋が真っ直ぐになるよう意識する。しかし、尊大な印象を教授に与えるわけにはいかないので、手を前で重ね、顔をほんの少しだけ俯かせる。
教授は絶対権力者だ。何かと世間様のうるさい昨今、一応、大学病院の悪しき慣習は改善されつつある。まあ、そのへんは病院によるけれど。で、あたしの属する医局は、まだまだ動きが鈍く、自主改革には至っていない。
形だけはそれらしくしているのだけどね。その一環で、うちの教授の権力がいくらか削がれたようだが、しかしそれは、昔と比較すればの話だ。現在でも、基本的に教授の意向ひとつで大抵の物事は決まるし、すでに決まったことが引っ繰り返ったりもする。
なにしろ医局の人事権を未だ握ったままなのだから、教授の影響力は陰に陽に大きなものがある。種々の決定権が医局内で分散されても、結局は教授がすべてを進めてしまう。昔と違うのは、直接か間接かくらいのことだろう。それでもだいぶ前進していると言えるのかもしれないが。
「今日は君に大事な話があってねぇ」
遠藤教授は意味ありげに言った。
若くして大学教授にまで上り詰めた実力者……だったのは昔のことで、今は禿げ上がった弱々しい老人でしかない。
昔は、極めて難しい手術を立て続けに成功させ、その一方で、世界的にも注目される論文を次々に発表してきた、らしい。
腕が衰えて手術室に入ることすらほとんどなくなった今の教授を見ていると、全盛期の活躍を聞いてもそれを信じるには少なからず努力を要した。
遠藤教授は、手術の腕が衰えただけでなく、自ら研究を行うこともなくなり、部下から上がってくる論文を横取りしてばかりいた。
技術も頭脳も退化させてしまった老人に残されたのは、権力だけだった。彼は権力を弄ぶことしか頭になく、彼の意に沿わなかった医局員はことごとく地方の病院に飛ばされていった。
まったく、人間というのは堕ちる時はどこまでも堕ちるものだ。
「お話というのは何でしょうか」
あたしは目を伏せがちにしながら聞いた。やれやれだ。小中高大と学生時代は常にトップを走ってきたこのあたしが、なんでこんな老いぼれのご機嫌を窺わないといけないのだろう。遠藤教授を前にするたびにあたしはそう思う。
「近々、栃木の系列病院にひとつ医局の空きができるらしくてね。うちからひとり送ろうかと思うんだが、君、どうかね?」
「わ、私がですか……?」
さすがに動揺が声に表れた。
私はこれまで様々な雑用を引き受けてきた。何年も掛けて完成させた論文を教授の手柄にされても、黙って耐えてきた。なのに、その挙げ句が左遷?
「おいおい、君、そう恐い顔をするな。冗談だよ、冗談」
「え? あ、はあ」
「栃木には別の者に行ってもらおうと思っている。講師の木根くんにね。そうなると、講師が空席になるわけだが、君、どうかね」
「講師? しかし私はまだ……」
「先輩をひとり飛び越すことになるが、君の能力からすれば順当だろう。日本でも若い教授がちらほらと生まれているような時代であることだし、これくらいはさして珍しいことでもあるまい。とにかく、2階級特進だ。おめでとう」
「あ、ありがとうございます」
私は戸惑いながら頭を下げた。あまりに突然のことに思考が追い付かない。左遷されるのかと直前に思っただけに、落差が大きすぎる。
左遷は冗談なんて教授は言っていたけれど、あるいはこうして私を困惑させることが狙いだったのではないだろうか。
だとしたら、次に来る言葉は……。
「とはいえまだ本決まりではない。君の考えを色々と聞いてから決めても遅くはないだろうと思ってね。話によっては君を栃木に送るというのも有り得なくはない。栃木の田舎に行くか、大学病院に残って出世するか、君次第というわけだ。まあとにかく、ゆっくりと話をしようじゃないか。ゆっくりと。教授室には誰もいないのだからね」
遠藤教授はそう言って、私の全身を眺め回した。
「脱げ」
いつもは遠回しな言い方ばかりする遠藤教授が、極めて簡潔で直球な発言をした。
この人は正気なのだろうか。真面目に疑問だった。今の時代にこんなあからさまセクハラをしたら、ただじゃ済まない。教授の椅子を失うのが恐くないとでも? 官能小説の読み過ぎで頭がおかしくなっているのではないだろうか。あまりにリスクの高い言動だ。
しかし……。
あたしは従うことにした。
白衣を脱ぎ、近くのソファに置き、ついで、胸元に手をやり、シャツのボタンを外していく。
これまでの苦労を水の泡にすることはどうしてもできなかった。あたしの心情を教授がどこまで見透かしていたのかは知らないが、彼の狙いは成功したと言わざるを得ない。
ボタンを外している指は、少し震えていた。
震えの原因としては、屈辱よりも不安の方が大きかったかもしれない。
男性経験がないわけじゃないが、乏しいものでしかなく、望まない相手に抱かれることなどむろん初めてだった。緊張くらいはするだろう。なにしろ突然のことだし。
じろじろと見られながら脱ぐのは苦痛だった。ひどく落ち着かない気分にさせられる。
全裸になったあたしは、手を横に揃えて立ち続けるよう命じられた。直立不動で教授のいやらしい視線に耐えねばならなかった。
「白衣の上からでは貧乳にしか見えなかったが、こうして見ると、人並みくらいにはあるではないか。しかし乳首は褒められたものではないな。黒ずんでいるぞ」
「…………」
人生で唯一の恋人だった男は、喧嘩別れをした際に、遠藤教授と同じような指摘をしていた。いや悪態と言った方がいいか。
あの時は頭にきてビンタしてやったが、今はただ黙っていることしかできない。
「凛々しい女医も白衣の下には黒ずんだ乳首を隠していたというわけか」
遠藤教授は殊更に強調しながらあたしの乳首をつまんだ。
あたしは乳首の色にコンプレックスを持っている。そのことを表情から察したのだろう。
相手の弱みを見付けたらとことんまで抉り抜く。それが遠藤教授だった。
まあ、あたしも似たようなものだけれど。あたしは権力が好きだ。他人を出し抜くことも好きだ。他人を蹴落とすことも好きだ。だから大学病院で教授になることを目指して日々努力している。
昔の遠藤教授は容姿も能力も優れていたらしいから、あたしと遠藤教授に違いがあるとすれば、現時点での地位くらいだろう。もちろん、性別とか財産とか、細かいことを言い出したら際限がないけれど。
あたしより30年早く生まれた分、教授の方があたしより立場が上だけれど、もしこれが逆で、あたしの方が偉い立場であったなら、あたしはこの男を苛め抜くに違いない。
自分に似た人間ほど鬱陶しい存在はないのだから。同族嫌悪。自分の欠点を直視させられれば誰だって不快になる。だから嫌う。苛める。
けれど、現実におけるあたしの地位はまだ低い。そして遠藤教授は権力を持っている。あたしを苛めることができる。
……こうなるのは当然の帰結だったのかもしれない。
遠藤教授は、あたしの乳首をつまんだまま、自らの手首を捻った。
「うっ」
乳首を引っ張られてあたしは呻き声を漏らした。
それほど痛かったわけではないが、気が張っている今は反応せざるを得なかった。
「ここまで黒くなるまでに、いったいどれほどの数をこなしてきた? 今まで咥え込んできた男の数を言ってみろ」
「……ひとりです」
「なに? 嘘をつけ」
遠藤教授の指に力が込められる。
「う、嘘ではありません」
今度は本当に痛みを感じ、あたしは顔を歪めた。
遊んでいる女は乳首が黒くなるという俗説を大学教授ともあろう者が信じているだなんて、おかしな話だ。しかしそういうことはよくある。専門家は専門家に過ぎず、自分の専門でないことには一般人並みに疎い。そうは言っても医者なのだから皮膚科の専門医ほどではなくても基礎知識くらいはあるんじゃないの、と思いがちだが、実際にこんなものなのだから仕方がない。普段 必要のない知識なんて、年月が経てば簡単に風化してしまうのだ。
まあ、この教授の場合、分かっていながらすっとぼけている可能性もあるにはあるが。
「とても信じられんなあ」
遠藤教授はしつこく言いながら、あたしの乳首を弄んでいた。引っ張ったり抓ったり、やりたい放題だ。
あたしは直立不動でそれに耐えていた。
やがて教授の興味は他に移った。
「下の毛は、並みか。こっちは乳首に比べて大人しいもんじゃないか」
「…………」
「おい、この俺が褒めてやったんだぞ。何か言うことはないのか?」
「ありがとうございます」
突っ立ったままお礼の言葉を口にする。手は真っ直ぐに伸ばして横に付けたままだ。
頭を下げるべきかどうか迷ったが、やはりそれをしないで正解だったらしく、教授は上機嫌であたしの陰毛に指を絡めだした。
「経験人数はひとりだと言ったな。今も付き合っているのか?」
「いえ」
「最後にセックスをしたのはいつだ?」
「それは……」
指折り数えていたわけじゃないので、よく分からなかった。けどまあ、別に裏を取られるわけではないだろうから、適当に答えておけばいいだろう。
「だいだい、5年くらい前になります」
「5年?」教授の声に驚きの感情が交じっていた。「ずいぶんと長いじゃないか。その顔と身体で男日照りとはな」
教授は相変わらず陰毛の感触を確かめながらそう言うと、もう片方の手であたしのお尻を叩いた。
軽い平手打ちだったが、無様にも尻たぶが波打ったのをあたしは感じた。
僅かとはいえ、痺れに似た痛みが生まれる。
あまりの屈辱に身体が震えそうになった。あるいは少しくらいは震えていたかもしれない。
教授は気付いていたかもしれないが、少なくとも態度には出さなかった。
「床に這え」
陰毛から手を離すと教授は冷淡に言った。
言われるままにあたしは四つん這いになった。
男に命令され全裸で床に這い蹲るだなんて、本来のあたしなら考えられないことだ。屈辱で顔が赤くなるのを止められなかった。
それを見られるのが嫌で俯いていたけれど、遠藤教授に「顔を上げろ」と言われて、仕方なくあたしは従った。
遠藤教授は、あたしの真横で膝を着いた。
あたしは全裸なのに、遠藤教授は白衣をしっかりと着込んでいる。立場の差を突き付けられているようで、悔しかった。
それに、ひどく落ち着かない気分になった。何も身に着けてない状態がこんなにも心細いものだとは思わなかった。お風呂に入る際に服を脱ぐ時は何も感じなかったけれど、今は衣服の温もりが恋しくて仕方ない。
空気が少し冷たいため、身体中の至るところで外気を直接 感じる。そのせいで、全裸の格好でいることを強く認識させられてしまう。
遠藤教授は、あたしのお尻に手を置き、ゆっくりと滑らせ始めた。
「実のところ、研修医時代の君を一目見た時から、いつかこうして手籠めにしてやろうと心に決めていたのだよ。普通、研修医といえば、どんなに優秀でも先輩医局員にペコペコするものだが、君ときたら、常に背筋を伸ばして凛としたまま指導を受けているのだからな。この糞生意気な女を跪かせてやりたい、と男なら誰もが思うところだ」
あたしのお尻を撫で回しながら教授は話を続ける。
「むろん、私がその気になれば、君を僻地に飛ばすことはいつでもできた。しかし、新米時代の君を今と同じように脅していても、おそらくは従わなかっただろう。君はとてもプライドの高い女だからな。だが今は違う。従う。実際、従った。この数年間の下積みを無にするのは誰だって惜しい。今日まで築いてきた地位にしがみつきたいと思うのは、当然だ。澄ましてはいても、君もやはり凡俗だということだな」
「…………」
教授の手があたしのお尻から離れた。
次の瞬間、ばちん、と乾いた音が鳴り、あたしはお尻に痛みを感じた。
「いい年をしてお尻叩きを受ける気分はどうかね?」
と教授は言った。
「…………」
「感想を聞いているのだが?」
「痛い、です」
「そんなことを聞いているのではない。どんな気分がするのかと聞いている」
また、肌を打つ音がした。
あたしは顔を真っ赤にしながら答えた。
「子供のようで、惨めな気分になりました」
嘘偽りのない言葉だった。
そのおかげか、遠藤教授は満足そうに笑い声を漏らした。
「では、今からあと10回叩くとしよう。君は、お仕置きを受ける子供のように、叩かれるたびに数を自分でかぞえなさい」
「…………」
「返事はどうした?」
お尻を平手打ちされて、あたしは慌てて「分かりました」と言った。
「よろしい。ああ、もちろん今のは数に入らないから、そのつもりでいなさい」
「……はい」
「一つ」
お尻を叩かれて、あたしは数をかぞえる。
「二つ」
幼子がお仕置きをされているかのようだった。
けれどお尻を叩かれているあたしは、いい年をした大人で、胸は膨らんでいるし陰毛も生えているし、手足はすらりと長い。普段は白衣を着て医者として働いているあたしが、全裸になって四つん這いになりお尻叩きを受けている……。
どう見ても異常としか言い様のない光景だろう。
「三つ」
遠藤教授の掌があたしのお尻を弾き、乾いた音を鳴らす。
5秒に1回くらいの間隔でそれは続く。
「……四つ」
言葉が少し遅れた。軽い平手打ちとはいえ、何度も叩かれているうちに少しずつ痛みが増してきて、思わず声を詰まらせてしまったのだ。
きっとあたしのお尻は今 赤くなっているだろう。
我慢できないほど痛いというわけではないが……。
「五つ」
「声が小さいぞ。次も同じなら、また1から数え直しだ」
「は、はい」
冗談じゃない。痛みはともかく、こんな屈辱を長引かせるだなんて御免だ。
「六つっ」
お尻に鋭い痛みを感じると同時にあたしは声を上げた。
遠藤教授は満足げに笑った。
「そう、それでいい。君の凛とした声は耳に心地良く響く。今の声も、新進気鋭の若手女医らしく、声に張りがあったな。医局で後輩に注意をしている時のようだったではないか」
「…………」
黙っていると、お尻に衝撃が与えられた。今までよりも少しだけ威力が大きかった。
「な、七つっ」
「おいおい。今のは数には入らんよ」
「え?」あたしは思わず遠藤教授を振り返った。「ど、どうしてですか?」
「今のは、私の言葉に反応せず黙り込んでいた君に対する罰だ。数に入ろうはずもない」
「…………」
頭に血が上りそうになったので、教授から顔が見えないようにあたしは前に向き直った。
「ほら、また無視をする」
再びお尻への打擲。やはりわずかに強かった。
「も、申し訳ありません、遠藤教授」
「当然、今のもカウントはなしだ。分かっているだろうな?」
「はい……」
「よろしい。では続きだ」
「……お願いします」
わざわざ「お願いします」なんて言う必要はなかったかもしれないが、またどんな難癖を付けられて余計に叩かれるか分からない。ゆえにあたしは、自分からお尻叩きをお願いせざるを得ないのだった。
「七つっ」
尻打ちはちょっとだけ弱くなった。といっても、六つ目以前の強さに戻っただけなのだけれど。
「いいぞ。次もその調子でかぞえなさい
「はい」
熱い痛みを訴えてくるお尻のことはなるべく考えないようにする。
「八つっ」
お尻を叩かれて、声を張り上げる。滑稽極まる状況だ。自分が情けなくなってくる。それこそが遠藤教授の狙いなのだろう。分かっていても屈辱で涙目になってしまう。
「九つっ」
かぞえながら、あたしはほんのわずかにお尻をもじつかせた。お尻の痛みも我慢しがたいところまできていた。
しかしあと一つだ。そう思い、最後の一発を待つ。
室内に大きな音が響き、激しい痛みがお尻を襲った。ラストだからなのか、今までになく強烈な平手打ちをお尻に加えられたのだった。
「と、十っ」
叩かれた瞬間にあたしは息が詰まりそうになったけれど、今まで数をかぞえてきたおかげで、幸いにも反射的に声を上げることができた。
遠藤教授は、赤くなったあたしのお尻を撫で回した。まるで触診しているかのように、教授の手の平が尻肌を緩やかに滑っていく。
自分の手で赤く染めたお尻の感触を確かめて、悦に入っているのだろう。
やがて教授の指はあたしの股間に伸びてきた。
これから老教授に身体を穢されるのだと分かっていても、四つん這いのまま大人しくしているしかない。
「…………っ」
教授にクリトリスを撫でられ、あたしは息を詰まらせた。
久しぶりの感覚だった。恋人との情事は約5年前から途切れているとはいえ、もちろん自分で慰めたりはしていた。しかし、自分の手で触れるのと他人の手で触れられるのとでは、全く違う。似てすらいない。別物と言っていいだろう。
当然ながら、自分で慰めるよりも、他人に慰めてもらう方が、遙かに気持ちが良い。あたしはそれを、好きな人に抱かれているがゆえだと解釈していたが、こうして教授にセクハラされている今も身体は敏感に反応してしまっているのだから、恋とか愛とかという類の感情は、快感を増す効果があるとしても、感じるための必須条件ではどうやらないらしい。
「んっ」
節くれ立った老人の指でクリトリスを擦られ、あたしは不覚にも官能の吐息を漏らしてしまう。
そのことについて遠藤教授に何か言われるだろうと思い、身構えたが、何故か皮肉を浴びせられることはなかった。
遠藤教授は、恋人を愛撫しているかのように、優しい手付きであたしのクリトリスを刺激し続けた。
そのやり方は、5年前に別れた恋人とそっくりだった。当時 付き合っていた彼は、自分勝手な面が目立つ男だったけれど、エッチの時は私を優しく導いてくれた。あたしが自分からペニスを求めたくなるまで、たっぷりと時間を掛けて前戯してくれたのだ。せっかちな彼の性格を考えると、結構な忍耐力が必要だったと思う。まあ、あたしを感じさせることで自尊心を満たしていたのかもしれないが。
遠藤教授も、当時の彼と同じように、じっくりねっとりあたしを責めていた。
指先でクリトリスをくすぐるように刺激したかと思うと、指の腹で軽く擦り上げたり、こね回したりしてくる。
相手が教授であることは常に頭の隅にあったが、それでもあたしは甘い快感に覆われた。
遠藤教授はクリトリスを弄くっているばかりではなかった。時にはクリトリスから指を離し、太ももを撫で回すこともあった。
その間、クリトリスを放置されたあたしは、もどかしさに腰を小さく揺すった。クリトリスへの刺激を催促しているようで恥ずかしかったが、官能への欲求の方が強かった。
さっきまで無様にお尻を叩かれていた時との落差が、余計にあたしの抵抗力を弱めていた。
屈辱的な痛みと、甘ったるい快楽。それらを与える順番とその効果もまた教授の計算通りなのかもしれない……。
教授の指が膣口に触れた時、あたしは、自分が愛液を溢れさせていることにようやく気が付いた。
粘液に濡れた指が、小陰唇を滑る。あたしの愛液によって教授の指がぬるぬるになっているのは明らかだった。
教授は、愛液をまぶすように膣口周辺に指を這わせていった。あたしが感じた証拠である愛液を、本当に愛おしいと思っているような、そんな手付き。
もしかしたら、とあたしは思った。教授があたしに皮肉を言わなくなった理由。そこに思い至ったのだった。
恋人に抱かれていた時のことを思い出して官能を高めているあたしの心情を予想し、それに水を差すことのないよう、教授はあえて黙っているのだ。
確かに、熱い息を漏らしたことや、愛液を溢れされていることを、皮肉混じりに指摘されたら、あたしの気分はたちまち醒めてしまって、快感どころではなくなるだろう。
あたしを官能の渦に溺れさせたいと教授が思っているのなら、何も口にしないのは正しい方策に違いない。
つまり、すべては遠藤教授の掌の上ということか。あたしは優秀な医者だけれど、女としての経験は知れているので、こうして身体を差し出したら最後、百戦錬磨の遠藤教授にはいいように踊らされるしかないわけだ。
「はぁ、あ」
理解したところでどうなるものでもなく、あたしは喘ぎを漏らし、更なる愛液を溢れさせた。
教授の人差し指を膣内に入れられても、たっぷりと濡れたそこは、苦もなく受け入れてしまった。
すかさず始まるピストン運動。最初は遅い。でも少しずつ速くなってくる。
あたしはたまらず四つん這いの姿勢を崩し、上半身を床に突っ伏した。膝はまだ立てたままなので、伏せた状態でお尻だけを高く突き出すような恥ずかしい格好になった。
勝手に動いたことで遠藤教授に何か言われるかと一瞬だけ思ったが、おそらく大丈夫だろう、とあたしはすぐに思い直した。実際、何も文句を言われなかった。ここまできてあたしの気持ちを萎えさせるようなことを教授が言うはずはない。
あたしを絶頂させることによって優越感を得たいのだろう、教授は。
前の恋人にもそういうところがあるのではないかと薄々思っていたけれど、教授の態度を見て確信した。男は女をイかせることに満足感を覚える。そういう生き物なのだ。単細胞。
もっとも……。そこまで見透かしていながら、相手の思い通りに絶頂させられようとしているあたしも、大概 単純なのかもしれない。
膣粘膜を掻き回されながら、再びクリトリスに触れられては、もはや抗いようがなかった。
指は、いつの間にか人差し指と中指の2本になっていて、激しい出し入れを繰り返していた。愛液が掻き乱され、淫らな水音を立てている。
クリトリスには、教授のもう片方の手によって、小刻みな振動が加えられた。
「あ、ああっ、はあぅっ」
膣とクリトリスの同時責めに、あたしはあっさりと絶頂に達した。
全身を震えさせながら、股間から潮を吹き、遠藤教授の腕を濡らした。あたしの潮吹きは長い。何度も官能の蜜を飛ばす。
あたしはそのたびに絶頂快楽を味わった。
絶頂を終えたあたしを遠藤教授はなおもいたぶった。
四つん這いになっているために下に垂れている乳房を揉みしだかれたり、乳首をつまんで引っ張られたりしても、あたしはろくに反応することができなかった。
久しぶりに他人の手によって与えられた絶頂はそれほどに大きく、重かった。
「男日照りの身体にクリトリス責めをされてはさすがにたまらんかったろう。盛大に潮を吹きおって。そんなにも気持ち良かったのか?」
「…………」
答えないでいると、教授はクリトリスを軽く押した。
「あう」
あたしは思わず腰を揺すってしまう。絶頂直後で敏感になっているクリトリスを刺激されては、無様に悶えざるを得ない。
仕方なく、答える。
「き、気持ち良かったです……」
こんなことは言いたくなかったけれど、しかし潮を吹いてイッたばかりなのに「気持ち良くなかった」と言っても全く説得力はなく、遠藤教授の神経を逆撫ですることにしかならないだろう。
「そうか、そうか」
遠藤教授は、ご満悦とばかりに声を弾ませていた。生意気な医局員(あたしのことだけれど)をその手でイかせたことにより優越感に浸りきっているようだった。
「それにしても、貪欲なオマンコをしている。イッたばかりだというのに、もう物欲しそうにヨダレを垂らしているではないか」
「そんなこと、ありません」
「自分では分からないのか? ほれ、この通り」
遠藤教授は膣口を指で弄くった。くちゅっと淫らな水音が鳴る。あたしに愛液の分泌を示すために、わざとそうしたのだろう。
「聞こえたか?」
「は、はい」
肯定するしかない。あたしのオマンコは確かに新たな愛液を溢れさせていた。
遠藤教授は得意げに言った。
「私のチンポが欲しくなってきただろう?」
「そ、それは……」
欲しいわけがない。オマンコが官能に疼いていてもそこは変わらない。誰が爺臭い教授のペニスなんて欲しがるものか。
けれど、そんなことをそのまま口にするわけにはいかない。遠藤教授の気分を害するような発言をすれば、こうして身体を差し出した意味がなくなる。
だからあたしは、プライドを心の奥に押し込めて、媚びた声を上げた。
「教授のオチンチンが、欲しいです……」
「よしよし。女は素直が一番だ。ツンと澄ましたりなんてせず、男に跪いて生き抜くことだな。社会生活で重要なのは敵を作らぬことだよ、君」
「……はい。ご高説、ありがとうございます」
「私のチンポが欲しいのなら、いやらしくおねだりをしてみなさい」
「おねだり、ですか」
「娼婦のように男を誘うのだ。どうすればいいか、想像くらいはできるだろう」
「は、はあ」
不本意なことではあったが、あたしは、後ろに陣取っている遠藤教授を振り返り、言った。
「教授のオチンチンが欲しくて、あたしのアソコが熱くなっています。エッチなおつゆも溢れてきました。教授、お願いします。気持ち良くしてください。オチンチンをオマンコに咥え込みたいんです。オチンチンをください」
喋っているうちに顔が真っ赤になってしまった。
なんて、はしたない。
学生時代はトップの成績を維持し続け、社会に出てからもエリート医として歩み続けてきたあたしが、ペニスのおねだりをさせられるとは……。
あたしが屈辱を堪えて言葉を絞り出したというのに、教授は不満そうだった。
「ふうむ。まあ、そんなものか。期待していたわけではないが、現実はしょっぱいものだな。がっかりさせてくれる」
「申し訳、ありません」
お金のために股を開くような女を上手く演じられたとしても、そんなことが何の自慢になるというのか。上手く演じられないことをあたしはむしろ誇りたいくらいだ。
とはいえ、地方の病院に飛ばされないために股を開いている今のあたしが、娼婦とどれだけの違いがあるのかは、人によって判断の別れるところなのかもしれない。お金のために股を開くことと、保身のために股を開くことは、根本的には同じなんじゃないだろうか。しかも、股を開く相手は1世代以上も年の離れた老人なわけだし。
その辺のことを教授はどう考えているかは分からないが。
「男日照りの女医にあまり多くを求めるのは酷ということか。仕方ない。とりあえず、味見を始めるとしよう」
教授はそう言って、ズボンに手をやり、ペニスを取り出した。
勃起したペニスがあたしの股間に添えられた。
遠藤教授は、ペニスを小陰唇に擦り付けていった。
ペニスの先端は、尿道から湧き出ているカウパー腺液にまみれていた。
それに擦り付けられたクリトリスもまたぬるぬるになっていく。あたしが分泌した愛液とも混じり合って、さらに湿り気が増す。
「オマンコが物欲しそうにしているぞ。5年ぶりのチンポの感触はどうだ?」
「は、早く入れてください」
別にペニスが欲しくなったわけではない。このままではいつまで経っても終わらないため、さっさと次の段階に移って欲しいという、それだけの話だ。
「いいだろう。しっかり味わうといい」
ペニスが膣口に狙いを定めたことが、雰囲気で分かった。
遠藤教授はあたしの腰を力強く掴んだ。
あたしは顔を俯けて、じっと床を見つめながら挿入に備えた。
ペニスはゆっくりと侵入してきた。
必要以上に潤っている膣は、ペニスを悠々と受け入れた。ほぼ無抵抗で、ペニスが押し入ろうとする分だけ迎え入れていく。
「あああ」
あたしは無意識のうちに声を上げていた。気付いて、慌てて口を閉じる。
「どうした? よがりたかったらよがってもいいのだぞ。この部屋には私と君しかいないのだから」
「あ、いえ」
別に感じているわけではない。ただ太い物に膣内を押し広げられていく感覚に圧倒されてしまっただけだ。約5年ぶりのことなので、それは仕方のないことだと思う。
ペニスの先端が膣内の奥に達しても、侵攻が止まることはなかった。わずかだけれど、膣奥がぐっと押し込まれた。
教授のペニスは年の割りには活力に富んでいるようで、大きく、太く、あたしの膣内で存在感を放っていた。
すっぽりと埋没したペニスは、そこで大人しくしていることはなく、すぐに動き出した。
膣粘膜を擦り上げながらペニスが抜け出ていく。
「うぅ……」
あたしは不覚にも官能を刺激され、狼狽えた。
クリトリスを弄られて感じるのは仕方ない。いつも自分で弄くっているせいで、身体が官能を覚え込んでしまっているのだから。
けれど、ペニスの挿入はそう回数をこなしてきたわけではない。当時それなりに愛していた男のペニスで、何度か貫かれたことがあるだけだ。
それなのに、老教授のペニスで感じてしまうことになるとは、全くの予想外だった。
遠藤教授は、ペニスを半分も抜き出さないうちに、再び奥へと突き入れていった。
不自然なくらいに緩やかな動作だった。
またあたしを絶頂に追いやろうとでもしているのだろうか。
根元まで埋まったペニスが膣道を引き返していく。
出て行こうとするペニスと共に、膣内で分泌された愛液が掻き出され、膣口周辺を濡らした。
時折、何かの拍子でペニスと膣粘膜に隙間ができるのか、ぐちゅっと湿った音がした。
ひょっとしたら教授はわざとそうしているのかもしれない。あるいはただの偶然なのかもしれないけれど、性経験の少ないあたしには全く判別ができなかった。
ピストン運動は、往復のたびに速度を上げていった。
必然的に、結合部から発せられている粘着音も大きくなっていく。
ペニスと膣の擦れ合いも激しくなる。
「あ、ああっ」
あたしは喘ぎ声を漏らした。ペニスを出し入れされる快感は、もはや否定しようのないことだった。
昔は、愛する人のペニスだからこそ気持ち良くなれるのだと思っていたけど、どうやらそんなことはないらしい。嫌悪している男に膣内を掻き回されるだけでも、あたしはどうしようもなく官能を得てしまうのだった。
遠藤教授は腰を前後させながら、後ろからあたしに覆い被さってきた。
ペニスで膣奥を突かれるたびにその衝撃で揺れていたあたしの乳房が、遠藤教授の掌に包まれ、揉み込まれる。
爺臭い遠藤教授と身体を密着させることになり、あたしは不快感を覚えた。ペニスによって官能を与えられてはいても、それとこれとは別問題で、生理的な嫌悪は消えることがなかった。
あたしの胸を揉んでいることにより遠藤教授は興奮を高めたのか、腰の動きをますます荒くしていった。
今や、あたしのお尻と遠藤教授の股間は激しくぶつかり合い、部屋中に肌を打つ音が響いていた。
せわしなく出入りするペニスのせいで、膣粘膜が休む間もなく擦り上げられていく。官能は膨れ上がるばかりだった。
遠藤教授も同じようで、熱い息を吐いている。
子宮口を強く突き上げられているうちに、あたしは呆気なく再度の絶頂に達した。
膣内が収縮して、ペニスを一層 締め付ける。
しかし遠藤教授は構わずにペニスの抜き差しを続けた。
絶頂の余韻に浸る時間も与えられず、あたしはまたしても官能の渦に引きずり込まれていった。
互いの体液にまみれたペニスと膣が勢い良く擦れ合う。
胸を揉まれること自体は大した快楽にはならなかったが、たまに指先で乳首をこねられた時は、鋭い快感を得てしまう。
老いた身体のどこにそんな力があるのか疑問に思うほど、遠藤教授は長々とあたしを犯し続けた。
遠藤教授が射精をするまで、あたしはペニスによって4回も絶頂させられたのだった。
鬼畜外道な遠藤教授も、中出しをすればさすがに問題があると思ったらしく、射精の直前にペニスを抜き出して精を放った。
射精は、若い男のように勢いがあり、3度の大きな脈動があった。最初はあたしの背中に精液を飛ばし、次に腰に振り掛け、最後に尻たぶを汚した。
あたしは官能に頭が真っ白になっていたけれど、身体に放出された精液の熱い感触は、はっきりと感じ取っていた。