言われるままにあたしは四つん這いになった。
男に命令され全裸で床に這い蹲るだなんて、本来のあたしなら考えられないことだ。屈辱で顔が赤くなるのを止められなかった。
それを見られるのが嫌で俯いていたけれど、遠藤教授に「顔を上げろ」と言われて、仕方なくあたしは従った。
遠藤教授は、あたしの真横で膝を着いた。
あたしは全裸なのに、遠藤教授は白衣をしっかりと着込んでいる。立場の差を突き付けられているようで、悔しかった。
それに、ひどく落ち着かない気分になった。何も身に着けてない状態がこんなにも心細いものだとは思わなかった。お風呂に入る際に服を脱ぐ時は何も感じなかったけれど、今は衣服の温もりが恋しくて仕方ない。
空気が少し冷たいため、身体中の至るところで外気を直接 感じる。そのせいで、全裸の格好でいることを強く認識させられてしまう。
遠藤教授は、あたしのお尻に手を置き、ゆっくりと滑らせ始めた。
「実のところ、研修医時代の君を一目見た時から、いつかこうして手籠めにしてやろうと心に決めていたのだよ。普通、研修医といえば、どんなに優秀でも先輩医局員にペコペコするものだが、君ときたら、常に背筋を伸ばして凛としたまま指導を受けているのだからな。この糞生意気な女を跪かせてやりたい、と男なら誰もが思うところだ」
あたしのお尻を撫で回しながら教授は話を続ける。
「むろん、私がその気になれば、君を僻地に飛ばすことはいつでもできた。しかし、新米時代の君を今と同じように脅していても、おそらくは従わなかっただろう。君はとてもプライドの高い女だからな。だが今は違う。従う。実際、従った。この数年間の下積みを無にするのは誰だって惜しい。今日まで築いてきた地位にしがみつきたいと思うのは、当然だ。澄ましてはいても、君もやはり凡俗だということだな」
「…………」
教授の手があたしのお尻から離れた。
次の瞬間、ばちん、と乾いた音が鳴り、あたしはお尻に痛みを感じた。
「いい年をしてお尻叩きを受ける気分はどうかね?」
と教授は言った。
「…………」
「感想を聞いているのだが?」
「痛い、です」
「そんなことを聞いているのではない。どんな気分がするのかと聞いている」
また、肌を打つ音がした。
あたしは顔を真っ赤にしながら答えた。
「子供のようで、惨めな気分になりました」
嘘偽りのない言葉だった。
そのおかげか、遠藤教授は満足そうに笑い声を漏らした。
「では、今からあと10回叩くとしよう。君は、お仕置きを受ける子供のように、叩かれるたびに数を自分でかぞえなさい」
「…………」
「返事はどうした?」
お尻を平手打ちされて、あたしは慌てて「分かりました」と言った。
「よろしい。ああ、もちろん今のは数に入らないから、そのつもりでいなさい」
「……はい」
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