行進訓練はさらに続いた。
私は、厳しく指導をしながら、気が向いた時に「行進止め! 尻を出せ!」と言った。
そのたびに女囚5人はズボンとパンツを膝まで下ろした。
従順な彼女らに私は警棒を持って応え、五発の打撃音を鳴らした後、行進を再開させた。
それを10回ほど繰り返した後、ふと時計を見た。時刻は12時05分。午前9時に行進訓練を始めたから、およそ3時間が経過したわけだ。
そろそろ頃合かと思い、私は11回目の尻出しを命じた。これまでのように一発ずつ叩いてから、私は言った。
「何回 同じことを注意させれば気が済むんだ、お前ら! もういい! いちいちズボンとパンツを脱いだり履いたりする必要はない! 脱ぎ捨てろ!」
私の言葉に、新人5人は戸惑いを見せたが、逆らう気にまではなれなかったらしく、膝に止まっていたズボンとパンツを、渋々と足から抜き取り、地面に置いた。
「グズグズするな! さっさと行進を始めろ!」
5人は、尻を丸出しにしたまま、壁に向かっての足踏みを再開した。
上着はしっかり着ているのに、彼女らの下半身には、靴と靴下 以外には何もなかった。そのアンバランスな格好は、あまりにも滑稽だった。手と足を大きく振って足踏みをしているだけでも、間抜けな印象は拭えないというのに。
壁の方を向いていて私に顔を見られる心配はないので、おそらく彼女たちは、恥辱とそれに対する悔しさを、遠慮無く表情に出していることだろう。
やがて、先輩女囚 約40人が、運動場に出てきた。午前の労務を終え、昼食を済ませた彼女らには、交代で気晴らしの運動をすることが許されているのだ。
尻を出したまま壁に向かって足踏みをしている新人5人を、先輩女囚たちは全く気にしていなかった。別に、新人に気遣ってそう振る舞っているわけでないだろう。女囚がこの程度の屈辱を与えられることなんて、よくあることなのだ。いちいち気にしていても意味がない。それだけである。
先輩女囚たちは、運動時間をそれぞれに満喫していた。
新人5人に一番近い集団は、輪になってバレーボールのパス回しをしている。
「ちょっと、今の強すぎー!」
「あはは、ごめんごめん」
羨ましく思えるほど楽しそうな遣り取りが聞こえてくる。
当然、新人5人の耳にも入っているだろう。
遊んでいる先輩女囚の声を聞きながら、尻丸出しで行進を続ける気持ちは、どんなものだろうか。その答えは、5人ともが真っ赤になっている耳と、動きの悪くなっている手足が、これ以上ないくらいにハッキリと教えてくれていた。
「鬼塚! 腕が下がってきてるぞ! 足もだ! もっと上げろ!」
「はい!」
羞恥と屈辱にまみれた声が、のどかな運動場に響いた。
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