「全員、気を付け!」
私は大声で言った。目の前にいるのは、新しく入ってきた囚人5人。すべて女だ。
その中には、高校時代の同級生である鬼塚さんがいた。この検査室に入った時に初めて再会を果たしたのだが、鬼塚さんは高校の時と外見上はあまり変わっていなかった。
茶髪が黒髪になっていたり、長髪が短髪になっていたりはするが、それは刑務所に入る際に身嗜みを整えられたからだろう。
完璧に近かったスタイルは、ほとんどと言っていいくらいに変わっていない。ちょっとぐらい髪が変わっても、男から見れば彼女は今でも魅力的なはずだ。
鬼塚さんの顔を見ていると高校時代を思い出す。多少 目付きがきつめだけれど、それはそれで可愛らしいなどとのたまう男子が何人いたことか。
ほんの数年前のことなのに、なんだかずいぶんと昔のことのような気がする。
鬼塚さんは私に気付いているのかいないのか、神妙な顔をして私の命令に従い、直立不動になっていた。他の4人の囚人も同じだ。
まあ、それが当たり前のことなのだけれど、しかし私は心の中で安堵の息を吐いていた。いきなり鬼塚さんに反抗されたのでは私の立場がない。もしそんなことになったら、きっと4人の囚人たちは、私のことを舐めて掛かってくるだろう。
最初の印象を覆すのがどれほど大変なことか、私はこの1年間で身を持って思い知ってきた。
「これから身体検査をする! 服を脱いで下着姿になりなさい!」
直立不動になっている囚人たちに命令する。彼女たちは服に手を掛け、のそのそと脱衣を始めた。
このままではいけない。囚人は、いかなる時も刑務官の指示に素早く従わなければならない。だというのに、それが守られているとはとても言えない状況だ。動きがのろすぎる。彼女たちが刑務官を恐れていたら、絶対にこんな動きにはならないだろう。私は早くも舐められ始めているらしい。いくら声を張り上げていても、所詮、私なんてお嬢様育ちということか。囚人たちはそれを感じ取ったのかもしれない。
これはまずいパターンだ。私の後ろに控えている先輩刑務官も渋い顔をしているに違いない。この新入りたちにはもっと厳しく接する必要がある。
私は警棒を強く握り、囚人の一人に叩き付けた。背中を打たれたその女は、前のめりに倒れて、床に膝を着いた。右手も床に置き、左手で背中を押さえている。表情は苦痛に満ちていた。しかし数秒後には顔を上げ、私を睨み付けてきた。いきなり警棒で叩かれたのが不満らしい。
「返事はどうした!?」
私はそう言って、他の囚人の背中にも警棒を打ち付けた。
最後は鬼塚さんだった。私は彼女に遠慮なんてしないよう、意識して特別強く警棒を振った。鬼塚さんは「ぐうっ!」と無様な声を上げて、倒れ込んだ。
鬼塚さんも含めた5人は、その場に膝を着いたまま苦痛に呻いていた。
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